質問

最近、健康に配慮してか、酸素濃度を高めたエアコンやサウナがあるそうですが、酸素濃度が高まると火災の危険は高くなるような気がします。そもそも酸素濃度と火災の危険性にはどのような関連がありますか?

回答

通常の火災安全は、酸素濃度21%程度を前提に保たれています。酸素濃度が通常以上になる環境であれば、火災危険は増大します。

火災の危険性には、出火の危険性、燃焼拡大の危険性などがあります。例えば、衣服や家具が着火しやすい材料で出来ていれば、出火の危険性は高くなります。これら材料の着火特性は、着火温度で評価することができます。雰囲気中の酸素濃度が上昇すれば、同じ材料でも着火温度は低下することが知られています。同様に壁や天井などの建材の着火温度も、酸素濃度が上昇すれば低下するので、燃焼拡大の危険性も増大します。酸素濃度を高めると、火が着きやすくなるのです。

着火後の燃え広がりやすさも酸素濃度によって変化します。酸素濃度を高めると、火炎温度が高くなるので、炎の熱が材料表面の未燃部分をより素早く加熱し熱分解させる結果、可燃性ガスが発生しやすくなり、燃え拡がり速度が大きくなります。逆に、酸素濃度を下げると、燃え拡がり速度は低下し、ある酸素濃度に達すると炎は消えます。材料が燃焼し続けられるための最低酸素濃度を、「酸素指数」といいます。酸素指数は材料の種類や温度によって異なります。

酸素濃度は、爆発の起こりやすさや爆発威力にも影響を及ぼします。酸素濃度を高めると、爆発の危険性も高くなります。爆発は、可燃性混合気の燃焼範囲が広い程、また最小着火エネルギーが小さい程、発生しやすくなります。酸素濃度を高めると、可燃性混合気の燃焼範囲が広がり、最小着火エネルギーも小さくなります。

ガス爆発の爆発威力は、可燃性混合気の「層流燃焼速度」に大きく依存します。層流燃焼速度はまた、酸素濃度の影響を強く受けます。例えばメタンの燃焼速度は、酸素濃度とともにほぼ直線的に増大します。酸素濃度が21%から100%付近まで増大した場合、メタンの燃焼速度は約12倍になります。

なお、個別の設備や機器に関する危険性については、消防研究所は現在知見を持ち合わせておりません。