消防研究センターは、自治体消防の創設と併せて昭和23年(1948年)に設置された消防研究所の伝統と成果を引き継いだ、わが国唯一の消防防災に関する総合的研究機関です。
 戦後の市街地大火、高度成長期における危険物・石油コンビナート災害やホテル・デパート火災、20世紀終盤から相次いで発生した地震災害、気候変動により激甚化する風水害等、 災害の様相の変化に応じ、研究内容も変化してきました。しかし、78年が経過した現在も、当初の使命である「火災件数を減らし、また発生した火災を速やかに覚知して消火し、 人的及び物的の損害を極力減少させるための研究を行い、その成果を広く一般に普及し、以って火災その他の災害から国民の生命と財産を守り、人類の福祉に貢献すること」は、不変的なものです。
 最近では、その発生が懸念される南海トラフ巨大地震や首都直下地震、気候変動に伴い激甚化・頻発化する風水害等への対応が待ったなしです。 能登半島地震に伴う輪島市市街地火災、大船渡市林野火災、大分市佐賀関火災等の大規模火災も頻発しています。 また、超高齢化社会を迎え増大する救急需要への対応、消火活動の困難性が高い大規模物流倉庫等の火災、モバイルバッテリーから大規模な蓄電施設に至るまで様々なリチウムイオン蓄電池の火災が発生するなど、 社会経済活動の変化と密接に関連して、新たなリスクが出現し、火災・災害の形態が多様化しています。さらには、迅速な救命・救助活動が鍵となるCBRNE(※)テロをめぐる情勢も変化しています。 このような消防を取り巻く環境の変化に対応するため、消防分野における研究開発は益々重要なものとなっています。
 総務省消防庁では、令和8年(2026年)3月に消防技術戦略ビジョンを策定し、重点的に取り組むべき5つの研究開発のテーマ(重点分野)を定めました。 消防研究センターはこのビジョンを踏まえつつ、国民が安全で安心して暮らせる社会を実現するため、 次に掲げる消防のための施策及び消防活動に資する基礎的・応用的な科学技術の研究開発に中長期的な視点から取り組んでいくこととしています。 また、災害の発生等により、新たに実施すべき必要性が生じた研究開発にも機動的に対応していくこととしています。

  1. 市街地火災等の大規模延焼火災による被害を抑制するための研究開発
  2. EV火災を対象とした道路トンネル内等消防活動困難空間における危険回避に関する研究
  3. 大規模物流倉庫火災等消火活動困難な火災に対応するための消火手法の研究開発
  4. 火災原因調査と火災避難の高度化に関する研究開発
  5. 危険物施設における火災等事故・地震災害を抑止するための研究
  6. 危険物貯蔵所における腐食等劣化に関する研究
  7. 災害時の消防力・消防活動能力向上に係る研究開発
  8. 救急需要増加への対応策の研究

 これらの研究を着実に進めていくためには、消防機関をはじめとする行政機関、消防防災に関する研究に取り組んでいる研究機関、さらには消防防災分野に関係のある企業や業界団体との連携が重要と考えています。

 消防研究センターは、引き続き国内外における消防防災分野の中核的研究機関として重要な役割を果たして参りますので、皆様のご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

消防研究センター
所長 白石 暢彦

※CBRNE(シーバーン)とは、化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)及び爆発物(Explosive)の頭文字の組み合わせ