外国人来訪者に適切に対応するとともに、ビッグデータ、G空間情報等の最新技術を救急車や指令運用システムに活用し、現場到着所要時間・病院収容所要時間の延伸防止や救急車の交通事故防止を図る研究開発を行っています。

(ア)外国人傷病者対応

  外国人来訪者への対応に関しては、国立研究開発法人情報通信研究機構との共同研究により救急隊用多言語音声翻訳アプリ「救急ボイストラ」を研究開発し、平成29年4月から実用化しています(第3-2図)。


救急ボイストラの使用状況

第3-1図 救急ボイストラの使用状況


第3-2図 救急ボイストラの画面(定型文表示)

第3-2図 救急ボイストラの画面(定型文表示)

(イ)救急車運用最適化

a背景・目的

  近年、救急車の現場到着所要時間・病院収容所要時間が延伸しています。この延伸防止のため、救急車の需要分析、傷病者情報分析等により、救急車の運用体制を最適化するプログラムの開発を行いました。また、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の技術を用いて、走行時間短縮の技術開発を行いました。

b 令和2年度までの5年間の主な研究開発成果

  救急車運用体制の最適化では、季節・曜日・時間帯等により変化する救急需要を予測し、この救急需要予測に対して救急車が手薄で現場到着所要時間が遅くなると予測する地域に事前に救急車を移動配置させる手法の研究を行いました(第3-3図)。また、この手法の現場到着所要時間の短縮効果を明らかにするため、名古屋市消防局において実際に救急隊を移動配置させる実証実験(第3-4図、第3-5図)を実施し、名古屋市消防局全体の平均現場到着所要時間が短縮することが明らかになりました。


第3-3図 運用最適化プログラムの画面例
赤丸:出場中の救急車、青丸:待機中の救急車
救急車が手薄な画面中央へ①の救急車を移動配置

第3-3図 運用最適化プログラムの画面例


第3-4図 移動配置中の救急車(実証実験時)

第3-4図 移動配置中の救急車(実証実験時)


第3-5図 指令室内での移動配置指示状況(実証実験中)

第3-5図 指令室内での移動配置指示状況(実証実験中)

  走行時間の短縮については、ドライバーから直接見えない周辺車両の情報を車両同士や道路と車両が直接通信しドライバーに知らせ安全運転を支援するITS Connect技術*6の中の「緊急車両存在通知」(第3-6図、第3-7図)に関して、平成30年度に救急車の走行時間の短縮効果があることを示し研究を終了しました。また、令和2年度から救急車に実装されています。


第3-6図 緊急車両存在通知(自動車内モニター表示)

第3-6図 緊急車両存在通知(自動車内モニター表示)


第3-7図 緊急車両存在通知により救急車を認識した例

第3-7図 緊急車両存在通知により救急車を認識した例


(ウ)乗員の安全防護等

a背景・目的

  救急車の交通事故が例年発生しており、これを効果的に防ぐ手立てが必要です。また、万一の衝突時も傷病者等を安全に防護することが必要です。そこで、救急車用のITS Connect技術を用いた事故防止技術の開発及び衝突時の安全防護に必要な構造・強度等の安全仕様を作成することを目的として研究開発を行いました。
  また、地震や津波によるがれきにより消防車両のタイヤがパンクし、消防活動に支障があることが想定されます。そこで、小型トラック用(主に救急車や指揮車用)のパンク対応タイヤの研究開発を行い、研究成果を災害現場対応の消防車両に活用する予定です。

b 令和2年度までの5年間の主な研究開発成果

  救急車用のITS Connect技術を用いた事故防止技術(第3-8図)については平成30年度に研究は終了しており、令和2年度から救急車に実装されています。
  パンク対応タイヤの試作品(第3-9図)を製作し、令和2年3月より消防本部の17台(救急車、指揮車)において耐久性を検証する実証実験を開始しました。しかし、走行には影響しないがタイヤの一部のブロックが欠ける現象が発生したため、改良を行った試作品で実証実験を継続して実施中(令和3年1月~令和4年中)です。


第3-8図 事故防止技術の例(右折時注意喚起)

第3-8図 事故防止技術の例(右折時注意喚起)

      トヨタ自動車HPより


第3-9図 パンク対応タイヤ

第3-9図 パンク対応タイヤ


*6 ITS Connect 技術:見通しが悪い交差点等において、車両同士や道路に設置された路側インフラ設備との無線通信によって得られる情報をドライバーに知らせることで、運転の支援につなげるシステム(出典:ITS CONNECT 推進協議会ホームページ)



↑ 前の項目へ ← 前のページへ トップページへ → 次のページへ ↓ 後の項目へ