対向流拡散火災バーナー消火時の水損が致命的な問題となるコンピュータ室、通信機器室、図書館、美術館などには、ガス系消火剤を使用する消火設備が数多く設置されています。これまでガス系消火剤として長年使用されてきたハロン消火剤は、地球のオゾン層を破壊する物質として国際的に生産が禁じられたため、現在ではオゾン層破壊の原因となる塩素、臭素を含まないフッ化炭化水素系の消火剤や、不活性ガスからなる消火剤が使われています。しかし、これらの新消火剤は、ハロンと比較して消火性能が劣るため、各消火剤の特質をよく理解した上で使うことが重要です。また、これら消火剤のなかには、ある条件の下では逆に可燃物の着火を促したり、フッ化水素など人体に有毒な燃焼排出物の生成を促進したりする場合があることが知られています。

わたしたちは、これらの消火剤を安全に使用できるようにするために、着火・消炎現象と燃焼排出物生成過程など消火剤のさまざまな作用を解明する研究を進めてきました。また、ガス系消火剤の基礎研究として、「対向流拡散火炎バーナー」と呼ばれる装置を試作して実験を行い、液体可燃物に対する各種消火剤の消炎性能や消炎現象そのものを明らかにする研究も行ってきました。

現在わたしたちは、窒素富化空気による火災の消火システムの開発をめざしています。これは、窒素濃度の高い(酸素濃度の低い)空気を閉鎖空間に大量に注入することにより、火災の抑制または消火を行うもので、廃棄物施設での火災などに有効であると考えています。


コンピュータ数値シミュレーションによる窒素を添加した空気の消炎濃度の予測


対交流拡散火炎バーバーを使った窒素による消炎実験