「旋風」の実験。横風中の火炎風下に発生した旋風が床面上に流した白煙で可視化されている。大規模な市街地火災では、「旋風」と呼ばれる竜巻状の空気の渦(巨大なつむじ風)が発生して大きな被害をもたらすことがあります。この旋風は、人や物を吹き飛ばすだけでなく、その猛烈な風によって急速な延焼を引き起こしたり、火炎を含んだ竜巻状の渦である「火災旋風」に発展したりすることもあります。1923年の関東大震災では、人々が避難していた陸軍被服廠(工場)の跡地であった空き地に旋風が襲来し、この場所だけで約3万8千人もの方が亡くなりました。

火災時に発生する旋風のなかでも、横風が吹いている条件での火災域の風下に発生する旋風はその報告例が非常に多く、被服廠跡を襲った旋風も当時の証言や気象条件、火災状況などからこのタイプのものであった可能性が高いと考えられます。しかし、旋風の発生条件や発生メカニズムはいまだ解明されておらず、その対策も全くとられていないのが現状です。

そこでわたしたちは、火災域の風下に発生する旋風の発生を予測できるよう、その性質・発生メカニズム・発生条件を、さまざまな規模の実験をとおして調べています。 これまでの実験で、火炎風下の床面(地表面)付近には、旋風の源ではないかと思われる数種類の渦が発生していることがわかってきました。さらに、これらの渦の形成過程には、横風に逆行する空気の流れなど、火炎風下の複雑な流れが関与していることなども明らかになりつつあります。


「火災旋風」の実験横風中の火災風下の空気の流れ