質問

「バックドラフト」と「フラッシュオーバー」という言葉を良く耳にしますが、この二つの現象の違いがよく判りません。それぞれどのような現象なのでしょうか?

回答

どちらも、火災時に急激な燃焼を伴う現象であることに違いないのですが、以下のように考えていただければ 間違いが無いのではないかと思います。

このように歯切れが悪い言い方をするのは、特にフラッシュオーバーについて、見る人の主観によって、その内容に幅があるからです。

つまり、これこそがフラッシュオーバーである!と、誰しもが納得するような燃焼形態もあれば、これがフラッシュオーバー?と首をかしげるような場合もあるのです。

【フラッシュオーバー:flashover】
フラッシュオーバーというのは、文字通り、室内の局所的な火災が、数秒~数十秒のごく短時間に、部屋全域に拡大する現象の総称で、物理的に明確な定義があるわけではありません。

以前は「局所的な火災で発生する未燃の可燃性ガスが天井直下に蓄積されていき、それが一気に燃えることで室内全体が火につつまれる」と考えられていました。しかしながら、現在では「局所的な火災によって熱せられた天井や煙層からの放射熱によって、局所火源そのもの、あるいはその他の可燃物が外部加熱を受け、それによって急速な延焼拡大が引き起こされ全面火災に至る」というのがフラッシュオーバー発生機構の一般的な考え方となっています。

【バックドラフト:backdraft】
カート・ラッセル主演の映画のタイトルで一躍有名になった言葉ですが、先のフラッシュオーバーと、しばしば混同して使われています。短時間で激しい燃焼が起きる点では同じなのですが、この現象の特徴は、「バック」と「ドラフト」にあります。

つまり、燃焼している部屋から外部に吹き出してくる(消防士からすれば、扉から押し戻されバックしてくる)、強い気流(ドラフト)がこの現象を特徴づけています。フラッシュオーバーが、空気供給をうけながら火災拡大していく過程で起きるのに対し、このバックドラフトは、空気不足でいったん火災成長が抑制された後に発生するという点で大きな違いがあります。

気密性の高い室内で火災が発生すると、室内の空気があるうちは火災が成長します。しかしながら空気が少なくなると燃え草がいっぱいあっても、鎮火したような状態になります。しかしながら、この段階でも火種が残り、可燃性のガスが徐々に室内に充満していくことがしばしばあります。こうした時に不用意に扉を開けると、新鮮な空気が火災室に入り込み、火種が着火源となり今まで燃えなかった可燃性ガスが爆燃する、これがバックドラフトです。気密性が高く、可燃物も多い冷蔵倉庫のような建物で発生しやすく、過去において炎が扉から噴出し消防士が殉職した火災事例も見受けられます。最近の建物も気密性が高くなり、バックドラフトが発生しやすくなっているので、火災がおきたら、火災室の扉は不用意にあけないようにしましょう。