2003年 十勝沖地震で「浮き屋根」が沈没した苫小牧の石油タンク石油タンクが、周期数秒から十数秒の「やや長周期地震動」と呼ばれる地震の揺れに見舞われると、タンク内部の石油の液面が大きく揺れることがあります。これを「スロッシング(液面揺動)」といいます。石油タンクのなかには、屋根を内容液に浮かせた「浮き屋根」式と呼ばれるタイプがあり、スロッシングが起きるとこの「浮き屋根」も揺動することになります。2003年十勝沖地震の際、苫小牧市にある石油タンクでは、「浮き屋根」が大きく揺動し、揺れ幅は最大3mにも達しました。その結果、「浮き屋根」は破損して油の中に沈没し、タンクの油が大気に露出するという大変危険な事態となりました。このような被害を受けたナフサタンクでは、約44時間燃え続けるという大火災が発生しました。

「浮き屋根」の沈没被害をなくすためには、どのような対策を施せばよいのか?「浮き屋根」は、どの程度の揺動でどれくらいの損傷を受けるのか?これらの問題を解決するには、地震時の「浮き屋根」の揺動状況を詳しく把握しなくてはなりません。そこでわたしたちは、小規模の模型タンクや、実物の石油タンクを使って、「浮き屋根」の揺動実験を行っています。この結果、スロッシングの波高の予測精度を向上させたり、「浮き屋根」がスロッシング波高に及ぼす影響を評価したりすることに役立つデータが得られつつあります。


実際の浮き屋根石油タンクを用いた浮き屋根の振動実験


模型タンク浮き屋根揺動実験結果


スロッシング発生時の石油タンクの液面形状