石油タンク底部の腐食が進むと、穴が開いたり、地震により破損したりすることで大量漏洩事故のおそれが出てきます。現在、石油タンクの腐食状態の診断は、約10年に一度、タンクを空にして超音波でタンク底部の鋼板の厚さを測定するという「開放検査」で行っています。しかし、この方法では石油タンクを空にする必要があるだけでなく、腐食している箇所を全て発見するには非常に多くの労力が必要となります。

そこでわたしたちは、「AE波」を使って、石油タンク底部全体の腐食状況を診断する方法の開発に取り組んでいます。この方法では、石油タンクを空にする必要がなく、短時間で診断ができる可能性があります。この診断技術が確立されると、石油タンク稼働中に検査を行ったり、腐食が進んでいると診断されたタンクのみ早急に精密検査を行い、そうでないタンクについては開放検査を先送りにしたりすることができるなど、効果的で効率がよい検査体制が可能になります。

「AE波」とは、腐食の活性度に応じて放出される微弱な弾性波のことです。これは、タンク各部位で腐食生成物質がはがれたり、割れたりすることにより発生すると考えられています。「AE波」は、タンクの外側に貼り付けたセンサーで検出することができます。これまで、実際の石油タンクを使って「AE波」の測定実験を繰り返してきました。その結果、石油タンク底部の「腐食危険度」が大きくなるにつれて「AE活動度」も大きくなるという関係を定量的に把握することができました。この関係を使えば、「AE波」の測定から腐食程度の推定が可能になります。


1978年宮城県沖地震で石油タンク底部に生じたき裂石油タンク側板に取り付けられたAE波センサー


開発したニュートラルネットワークによるAE源位置評定ソフトウェア