(ア)背景・目的

  南海トラフ地震や首都直下地震の発生時には、石油コンビナート地域をはじめとする大型石油タンクの立地地点も、非常に大きな地震動に見舞われるおそれがあります。また、南海トラフ地震については津波の到達が予測されており、これらによる石油タンクへの影響も懸念されます。

  本研究では、高精度な石油タンク地震時被害予測のため、(1)大型石油タンクにおける振動測定によるバルジング(タンク側板の振動)の固有周期算定式の精度の検証、(2)短周期地震動による石油タンクの応答・挙動の既往の解析手法の精度の検証、(3)「石油タンク地震・津波被害シミュレータ(全国版)」の開発、などに取り組んでいます。

(イ)令和2年度までの5年間の主な研究開発成果

  短周期地震動による石油タンクの被害発生条件を調べる上で重要なパラメータの一つである石油タンクのバルジングの固有周期を、硬質地盤上に立地する容量12万5,000kL及び5,000kLのタンクにおける微動測定により実測しました。その結果、消防法令で定められている硬質地盤立地条件に対するバルジング固有周期の算定式の精度が高いことが確認され、当該算定式が短周期地震動による石油タンクの被害の予測に有効であることがわかりました。

  また、平成30年北海道胆振東部地震の際の短周期地震動により苫小牧東部の石油備蓄基地の石油タンクが受けた影響を、消防法令上の基準で用いられている石油タンクの地震応答計算式で評価しました。その結果、大型のタンクの側板が変形しなかったこと及び小型のタンクの側板が変形したことなどが当該計算式によって説明できることが確認され、当該計算式が、短周期地震動による石油タンクの側板の変形被害の予測に有効であることがわかりました。

  さらに、全国に80ある石油コンビナート等特別防災区域の周辺の地形(海底地形を含む。)等のデータベースを整備するなどして、「石油タンク地震・津波被害シミュレータ(全国版)」の試作版を開発しました(第4-1図)。


第4-1図 「石油タンク地震・津波被害シミュレータ(全国版)」の出力イメージ

第4-1図 「石油タンク地震・津波被害シミュレータ(全国版)」の出力イメージ



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