(ア) 背景・目的

  化学物質に起因する火災を予防するためには、多岐にわたる化学物質の火災危険性を適正に把握し、火災予防・被害軽減対策を立案しておくことが重要です。しかしながら、従来の火災危険性評価方法では、加熱分解、燃焼性、蓄熱発火及び混合等に対する危険性評価が困難で適正でない場合があります。本研究では、化学物質及び化学反応について、現在把握できていない火災危険性を明らかにし、適正な火災危険性評価方法を確立するため、熱量計等を用いて得られる温度及び圧力等を指標として、分解、 混合、燃焼及び蓄熱発火危険性を定量的に評価する方法の研究開発を行っています。

(イ)令和2年度までの5年間の主な研究開発成果

  (1)分解危険性、(2)混合危険性、(3)燃焼危険性及び(4)蓄熱による自然発火の危険性に関して、新たな知見を得ると共に従来には無かった火災危険性評価方法を開発しました。(1)分解危険性については、液体試料について発熱量を評価する場合、 気相中の分解反応を過剰に評価するため試料量を増やして評価する必要性を提案しました。また、加熱によって突発的に激しい分解を起こす自触媒型の有機過酸化物について、等温下におけるカルベ式高感度熱量計の測定結果から計算した活性化エネルギーを基に発熱挙動の推定方法を示しました。(2)混合危険性については、混合熱量計を使用して熱流束と発生気体の流速を同時に測定する定量的な混合危険性評価方法を提案しました。(3)燃焼危険性については、圧力・温度同時測定示差走査熱量計によって 測定される発熱速度及び圧力等を指標とした燃焼 危険性評価方法に加えて、燃焼速度の推算法を提案しました。(4)有機物の蓄熱による自然発火危険性については、高感度熱量計等を用いた火災危険性評価方法を提案し、種々の有機物試料の火災危険性のランクを示しました。また、自然発火危険性と水分量の関係を明らかにしました。


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