地下鉄駅舎構内のような地下施設や超高層ビルは、空間・空調・排煙系統が複雑に接続されたネットワーク構造になっています。火災発生時の火災の進展や煙の拡散は、このネットワークのつながり方次第で著しく異なります。2003年に韓国テグ市で発生した地下鉄放火火災では死者192人のうち、約50人の方が地下施設内で逃げ遅れて亡くなりました。

これまでにわたしたちは、火災時の効果的な避難誘導方法の検討や人間行動の解明を進める目的で、「火災体験シミュレータ」を開発しました。このシミュレータには、実災害を擬似体験できるバーチャルリアリティ技術が使われています。このシミュレータにより、テグ市の地下鉄火災や、2001年に発生した新宿雑居ビル火災をシミュレートしました。

現在は、さらに、地下施設・超高層ビルのCADデータなどのデジタル設計データを使って、そのなかで発生する火災の進展状況や、温度・煙・有毒ガスなどの変化を予測することができる「3次元熱流体火災シミュレータ」の開発を進めています。このシミュレータは、火災予防対策や消防戦術などの立案、消防隊員の教育訓練等に利用できます。


バーチャルリアリティ技術を使った火災の疑似体験室 平易な入出力で火災進展を予測できる二層ゾーンプログラム