東日本大震災による危険物施設等の被害状況に係る緊急調査の結果について

石油コンビナート等特別防災区域における被害状況調査

調査した地域

(1)気仙沼市、(2)仙台地区(仙台市、七ケ浜町)、(3)いわき市、(4)鹿嶋市、 (5)酒田市、(6)新発田市、(7)新潟市、(8)市原市、(9)川崎市、

調査の視点

  • タンク側板、床板、浮き屋根が受けた被害状況は消防法令の技術上の基準を見直す必要のあるものであるか
  • 仙台地区の火災の原因
  • 千葉県市原市のコンビナート火災の出火原因
  • 巨大な津波が来襲した地区における危険物施設の被害の状況はどうであるか

被害状況マップ

調査した地域での危険物施設の被害は、地域ごとに異なった様相を呈しているように見受けられる。ここでは、地域を太平洋側、日本海側、東京湾岸と大きく三つに分け、それぞれの地域での被害の特徴を記す。

  1. 太平洋側のコンビナート被害の特徴
    1)タンク・配管の浮上、移動、地盤・基礎の洗掘(タンク底板の破断)など、津波による被害が多く見られる。
    2)やや長周期地震動によるスロッシングは小さく、浮き屋根の顕著な被害は見られない。
    3)短周期地震動による側板座屈、浮き上がりなどの被害は見られない。
    4)地盤の液状化が発生している。
  2. 日本海側のコンビナート被害の特徴
    スロッシングによる浮き屋根のポンツーン破損、デッキ上への溢流被害が多く発生しているように見受けられる。
  3. 東京湾岸のコンビナート被害の特徴
    1)スロッシングによる浮き屋根沈没、デッキの割れなど地震動による被害が多く発生しているようである。
    2)危険物施設からの出火は無し。

製油所の危険物漏洩

製油所の火災(1)

焼損したガソリンタンク 基礎のコンクリートリングが傾斜
焼損したガソリンタンク
防油堤近傍
防油堤近傍は洗掘され、防油堤が撓んでいる
タンク基礎
タンク基礎は人が隠れるほど流出
底板と側板は長さ約2.4mにわたり破断
底板と側板は長さ約2.4mにわたり破断

製油所の火災(2)

倒壊、焼損したアスファルトタンク
倒壊、焼損したアスファルトタンク
アスファルトタンクの屋根
アスファルトタンクの屋根はガス出荷場の柱に衝突して止まっていた。移動距離は116m。
消失した護岸と近傍の地盤の流出(アスファルトタンク近傍)
アスファルトを加温するための油を加熱する炉が焼損
アスファルトを加温するための油を加熱する炉が焼損

屋外タンク貯蔵所の流出

多数の屋外タンク貯蔵所が津波により流出
(流出油量は11,521kL(推定)、油種:重油、灯油、軽油、ガソリン))

流出した屋外タンク貯蔵所1流出した屋外タンク貯蔵所2


スロッシング被害

デッキ上への漏洩
デッキ上への漏洩
ポンツーン内への原油の滞油
ポンツーン内への原油の滞油
側板の油痕
側板の油痕
スロッシング波高約1.8m

ゲージポールの変形 スロッシング波高約1.4m
ゲージポールの変形
スロッシング波高約1.4m
ポンツーン内への原油の滞油
ポンツーン内への原油の滞油(3室で破損有)
スロッシング波高約1.9m

浮き屋根上に溢流
浮き屋根上に溢流→3日後に浮き屋根沈没

ゲージポールの変形
ゲージポールの変形
ゲージポールの変形
ポンツーン4室破損し灯油が流入

内部浮き蓋付きタンクの被害

ポンツーン4室破損
破断したフロートチューブ1
破断したフロートチューブ1
ゲージポール近傍の破損浮き蓋散乱状況
破断したデッキスキン、フロートチューブ
破断したデッキスキン、フロートチューブ
破断したフロートチューブ2
破断したフロートチューブ2

製油所火災

ガスタンクの支柱が座屈し配管を損傷
ガスタンクの支柱が座屈し配管を損傷
アスファルトタンクの側板損傷
隣接区画のアスファルトタンクの側板が損傷

飛散したガスタンクの破片
飛散したガスタンクの破片
製造装置の制御室の焼損
製造装置の制御室の焼損

液状化の被害等

大規模タンクの沈下
大規模タンクの沈下。バルブの下部が基礎に接触
タンク付近が液状化
タンク付近が液状化、タンクが沈下
バースの被害
バースの被害
護岸の津波被害
護岸の津波被害