気仙沼市、石巻市の延焼火災調査

  • 調査者:5名
  • 期間:3月29日~31日
  • 調査概要:3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う被害を調査した。広域火災の延焼範囲、その火災の延焼方向、目撃者からの情報、写真及びビデオによる記録等を実施した。

気仙沼市(3月30日)

気仙沼市の火災現場を調査した。調査範囲は大きく2つになり、一つは湾東岸地区(浪板、大浦、小々汐、二ノ浜)で、もう一つは鹿折地区である。


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(1)湾東岸地区

タクシーで南下できるところまで進んだ。行き止まりの漁港で、漁師の人と話ができた。

「地震当日、港に着く直前であった。一度着港し、家族に避難の指示を出し、船を守るため、外洋に向け出発。大島との間で津波第一波に遭遇した。湾内のタンクヤード付近まで流された。その時、小々汐地区の海岸の家はすでに破壊されていた。がれきをよけながら外洋に出て、3日後に帰港した。第一波で助かったのは運が良かった。」

船着き場の護岸が海面すれすれぐらいであったが、以前より数十センチ岸が下がったということだった。

山の神付近の火災

津波の直撃は免れた家を片づけていた住民の人に話が聞けた。「地震当日に漁船が岸に乗り上げるように止まり、火災を起こした。漁船の出火原因は不明。漁船の火災は数日くすぶり続け、道路に散乱していたがれきに延焼した。その後、山面に沿って延焼した。林床、樹幹根元を延焼した」「津波により、燃えているガレキや燃えたガレキが、岸の運ばれてきた。」

写真:現場の様子
山の神付近の住宅・林野火災
小々汐(こごしお)の集落

海岸から少し入ったところから火災が始まっていた。山の神付近の住民の話しで、津波2日後に住宅から出火し、避難所となっていた浦島小学校方向に延焼してきたので、住民で消火活動をしたということであった。

小々汐集落の建物火災例
小々汐集落の建物火災例

(2) 鹿折(ししおり)地区

3月24日に調査しきれなかった、西側の線路付近の焼け止まり状況、延焼範囲より南側の街区内での焼損建物の調査を行った。線路上に車両が押し上げられ、焼損していた。枕木も焦げていた。

鹿折地区の延焼火災の様子
鹿折地区の延焼火災の様子
線路上の車両の様子
線路上の車両の様子
線路上の車両と枕木の焼損
線路上の車両と枕木の焼損

延焼していた街区の南側を調査した。何棟か形を留めている建物があったが、焼損していた建物はなかった。川寄りの街区は海水が上がってきていて踏み込めない状態であった。

街区内に海水が入り込んでいる様子(1)
街区内に海水が入り込んでいる様子(1)
街区内に海水が入り込んでいる様子(2)
街区内に海水が入り込んでいる様子(2)

石巻市(3月31日)

石巻市の火災現場を調査した。調査範囲は大きく3つになり、一つ目は門脇町地区で、二つ目は門脇町3丁目地区、三つ目は蛇田地区である。


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(1)門脇町(かどのわきちょう)地区

延焼範囲を調査した。東西900m、南北100mほどの範囲が延焼していた。北面は崖になっており、焼け止まりになっていた。住民の話しでは、風向きはおよそ北西であった。門脇小学校付近の住民に話しが聞けた。それによると、学校に大勢の人が避難して来ていた。校庭には避難者の車両が停めてあった。停めてあった車両を津波が押し流した。その後校庭の車両から火災が発生し、車両が燃えた。避難してきた人たちは、校舎の裏から裏山方向に逃げた。その他の場所での発火情報は確かなものは得られなかった。
道路や耐火建物による焼け止まりがいくつかの場所で確認できた。写真三段目の耐火建物は、北面は焼損しているが、南面は焼損がなかった。

門脇小学校校舎の燃えの状況と校庭の燃焼した車両(1)
門脇小学校校舎の燃えの状況と校庭の燃焼した車両 (1)
門脇小学校校舎の燃えの状況と校庭の燃焼した車両(2)
門脇小学校校舎の燃えの状況と校庭の燃焼した車両(2)
北面崖での焼け止まり(1)
北面崖での焼け止まり(1)
北面崖での焼け止まり(2)
北面崖での焼け止まり(2)
耐火建物での焼け止まり
耐火建物(信用金庫)での焼け止まり
耐火建物(商業ビル)での焼け止まり
耐火建物(商業ビル)での焼け止まり

(2)門脇町3丁目地区

旧北上川の河口付近に位置する市立病院の北側で焼損している倉庫等を調査した。二階建てのアパート、薬局、造船所、食品倉庫等が焼損していた。

二階建てアパートと造船所の火災状況(1)
二階建てアパートと造船所の火災状況(1)
二階建てアパートと造船所の火災状況(2)
二階建てアパートと造船所の火災状況(2)
冷凍食品倉庫の火災(1)
冷凍食品倉庫の火災(1)
冷凍食品倉庫の火災(2)
冷凍食品倉庫の火災(2)

(3)蛇田(へびた)地区

住宅5棟の火災を調査した。延焼範囲を確認した。近所の人の話では、地震後泥水が上がってきたので避難した、ということ。

木造家屋の焼損状況
木造家屋の焼損状況

名取市の延焼火災調査

  • 調査者:5名
  • 期間:平成23年4月1日
  • 調査概要:3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う被害を調査した。広域火災の延焼範囲、その火災の延焼方向、目撃者からの情報、写真及びビデオによる記録等を実施した。

名取市

名取市の火災現場を調査した。調査範囲は2つになり、一つは閖上地区で、もう一つは閖上平田橋地区である。


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(1)閖上(ゆりあげ)地区

タクシーで海岸線付近まで行き、戻りながら延焼地域を探した。見つけられた延焼街区は、百数十m四方の街区であった。延焼の焼け止まり線の確認を実施。

北西側は水田で焼け止まりが見られ、他の部分は、道路、空き地などで焼け止まっていた。この街区は住宅地だったようで、ほとんどの木造家屋は破壊されていたため、がれきになっていた。延焼区域内には、ガレキ以外では2階建ての耐火建物と工場の鉄骨くらいしか残っていなかった。

延焼街区内の耐火建物と鉄骨(1)
延焼街区内の耐火建物と鉄骨(1)
延焼街区内の耐火建物と鉄骨(2)
延焼街区内の耐火建物と鉄骨(2)

ニュース等のテレビ映像で確認したところ、燃焼しながら流されてきたガレキがこの場所に止まって拡大した状況があった。

(2)閖上平田橋地区

小さな川沿いに、幅30m、長さ200mほどの範囲に、焼損物がつながっていた。県道10号から北の方向に延焼範囲が確認できた。県道沿いには、作業場のような建物が焼損していた。川の両岸に焼損したガレキがあった。

建物の焼損状況(県道10号沿いの作業場と燃焼した車両の影響で外壁の焦げた住宅)(1)
建物の焼損状況(県道10号沿いの作業場と燃焼した車両の影響で外壁の焦げた住宅)(1)
建物の焼損状況(県道10号沿いの作業場と燃焼した車両の影響で外壁の焦げた住宅)(2)
建物の焼損状況(県道10号沿いの作業場と燃焼した車両の影響で外壁の焦げた住宅)(2)
川の両岸の様子(県道10号から北に150mほど進んだあたり)(1)
川の両岸の様子(県道10号から北に150mほど進んだあたり)(1)
川の両岸の様子(県道10号から北に150mほど進んだあたり)(2)
川の両岸の様子(県道10号から北に150mほど進んだあたり)(2)